ふるさと納税の形骸化
2024年06月22日
資金力(税収等)が豊富な都市部から、多くの仲介事業者がサイト運営や手数料名目で自治体から搾取をするように群がったふるさと納税制度ですが、発足当時は納税者に関連したふるさとへの恩返しや過疎化による税収不足を補い、自然災害等に見舞われた地域復興への協力などが本来の目的であったことはご承知の通りです。結果的に殆どの都市部の自治体から流出した税金が都市部の行政サービスを悪化(国による若干の補填制度はあるようです)させることに繋がっているのは、非常に複雑で多様な制度運用改正が行われたことからも、本来の主旨から外れた納税(寄付)より返礼品目当ての寄付という運用方法を認めたことに課題があったことを示しているでしょう。
Amazon券を返礼品とした泉佐野市の例に始まり、地方活性化につながる地元生産品が使われていないケースや30%・50%ルールなどの追加措置、一部自治体の制度参加除外など、その土地との関連性が殆どないような特産品が多く出回ったことでも、当該制度自体の設計段階で大きな誤算や想定していなかった(または、所管の総務省が相応のリスクがあることは理解していた)可能性は否定できません。結局、都市部の税収が地方へ分配されるという目論見が単なる政府が主導する形での新ビジネス事業へ税金を投入した形になったのだと考えています。
さらにこの制度で最も影響を受けたと言われる東京23区(特に世田谷区)、横浜市・川崎市、大阪市、名古屋市などでは、それぞれの地域特有の問題(例えば給食・インフラ整備など)が露呈することになり、納税の義務の意味するところを勘違いした(または、私利私欲を優先した)方もいたのだと思います。ただ、この制度を利用していた納税者数は約900万人と全体の15%程と微増傾向にありますが、制度上の欠陥や形骸化を理解している納税者数が上回っていることに少々安堵しています。もし、読者の居住地で子育て支援・公共福祉・インフラ整備等のレベルが下がったとしたら、それでも返礼品目当てのふるさと納税利用を続けますか。