オフィス鴻

シニア人材のスキル

2024年08月12日

日本経済新聞の記事(5月)によれば、優秀な人材確保と人手不足対策として定年前と同じ職務を担当することを前提として、定年再雇用者の給与を現役世代並みに引き上げる企業(日本精工、スズキ、GSユアサなど)が増加傾向にあると報道されていました。改正高年齢者雇用安定法では、あくまでも努力義務として70歳までの就業機会確保(定年延長・再雇用延長・業務委託方式等)を謳っていますが、総務省の労働力調査によれば60歳以上の就業者は約1,500万人(就労人口の25%程度)とされ、将来の日本の社会保障制度維持等を考えれば、ある意味では世代間格差解消に些かでも繋がる可能性が指摘されています。

大企業等で役付役員を経験した方ならば、旧来の取引先等から社外顧問・取締役として一定期間収入を得ることが期待できますが、ほんの一握りであり必ずしも一生安泰という訳ではありません。しかし、製造業技術者などの専門的技術職・知識・経験等が当該企業にとって重要であれば、改正労働契約法第20条(同一賃金同一労働の原則)から大きく逸脱しない範囲で活躍の場があり、そのスキル価値の対価として見合う報酬を企業が用意することは十分納得性があるとも言えます。またアルムナイ採用(一度退職して、再び元の企業に再就職すること)やLinkedIn(ビジネススキル特化型SNSサービス、日本で約400万人が登録)の活用も盛んになっており、潜在的転職希望者もそれぞれの企業の魅力を知る観点では利用価値が高いでしょう。

その他にも、すばやいレスポンス、対応スピードの速さ、相手に貢献する姿勢などが加われば、周囲から感謝されることもありますが、全体的に加齢による職務遂行能力の低下傾向が見られることは寿命のある人類にとって避けられない課題でもあります。また、年金受給の先送りにより増加した分を加算すると想定以上に社会保険料負担・医療費自己負担分等が重く圧し掛かることもありますので、しっかりと生活設計をしてご自身に合った働き方を選択することも重要だと感じます。