オフィス鴻

不合理な商習慣

2025年08月13日

日本のビジネスモデルを見ていると、「良いモノを安く売る」ことが根幹にあるように感じています。昨年から続いている令和の米騒動も、政府の備蓄米放出のタイミングが後ろにずれたことで粗悪な米(食用には適さないもの)が市場で流通するようになった一因とも言われていますし、農家の売り渋り(高く買ってくれるところに先物取引しているような状態)もこれまでの米価を見ればある程度想定できた行動でしょう。実態解明は殆ど闇の中でしたが、いわゆるコメ取引実態のないバイヤー・ブローカーが差益を狙って参入したこと、JAの収穫量確保施策が時代遅れとなり他の流通ルートが出来上がってきた背景もあるように感じます。

編集人も従来の商慣習から新たな商慣習へと移行することを多く手掛けてきましたが、今回の米騒動で思ったことがあります。それは某北陸地方のJAが政府の備蓄米の殆どを買い占めたと言われていることで、真偽のほどは不明ですが米価を高値に誘導するには最も効果的手法のように考えています。ここでポイントとなるのは「消費者が逃げない程度の値上であれば、物価高騰の折少々の値上は許容されるであろう」と想定されることです。つまり安売りしたくないが故に流通量をコントロールして高値に誘導するのではなく、JAは最終的に競り落とした米を廃棄する可能性についての思考・戦略性があまり感じられないのです。

日本人に限らず「大切な命を頂いている」という食文化は世界各地にあります。日本でも農林水産省が1日1人あたりおにぎり1個分の食料(食べ残しだけで年間100万トン)を廃棄しているとの資料をHPに掲載しています。考え方は人それぞれですが食品に限らず心に残るような体験価値をプラスすれば現在の価格競争から脱却でき、更に消費者にそっぽを向かれずに高値でも売れるという学説(体験価値・サードプレイス体験など)も現に存在します。これが種苗法改正の一部であり、日本の果物が海外でも高値で取引される要素だと考えています。安易な商慣習に頼ることはそろそろ卒業するべきでしょう。