中小企業のM&A
2024年05月04日
これまでコロナ禍での金融支援策の1つである「ゼロゼロ融資」を軸とした融資返済開始に伴い、一時的な資金繰りで凌いできた本来ならば倒産・廃業になっていた企業(ゾンビ企業)の破産手続き開始等の報道を見かけることが多くなりました。特に建設業・物流運送業を対象とした労働時間上限規制(2024年問題)、サービス・観光業を中心とした深刻な人手不足は顕著で昨年末に発表された完全失業率も2.5%程度と低く、この3年間にデジタル化・DXや新規事業への人材投資・育成などの企業体質の改善を行ってきた企業と、単に延命してきただけの企業との差は拡がったように見えます。
また、今年から企業間決済(インボイス制度)の本格的運用と改正電子帳簿保存法が施行され、電子化推進による企業側の作業負担を減らして生産性を上げる方向に進んでいることは、会計を軸とした統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」でのオービック社等の好業績を見れば一目瞭然のように思えます。一方で余力のない中小企業はクラウド化による業務効率化が遅れていることも事実であり、以前から中小企業経営者の後継者問題(事業承継)が指摘されてきたことも含めて鑑みれば、M&Aには相応の企業価値が認められることが前提である以上、既にコロナ有事対応に追われている段階はとうに過ぎたと考えられます。
特にコロナ禍は観光産業に未曽有の人手不足(離職・倒産等)を引き起こし、TSRの調査では借入金月商倍率が危機的水準まで低下していることや、日本政府観光局(JNTO:Japan National Tourism Organization)の外国⼈旅⾏者誘致活動のメインである⽇本へのインバウンド・ツーリズム(外国⼈の訪⽇旅⾏)もオーバー・ツーリズムの弊害(人手不足・公共交通・観光地への集中・旅行者マナーの悪化・宿泊施設不足など)を引き起こす結果となっています。また、高級外資系ホテルの進出や宿泊事業者の価格転嫁、円安等により高価格帯の部屋から埋まっていく傾向もみられるそうで、戦略性の高い事業者へと顧客の集中が始まっているようですね。