オフィス鴻

人的資源とバランスシート

2024年02月26日

バランスシート(B/S;貸借対照表)はプロフィットアンドロス(P/L;損益計算書)キャッシュフロー計算書(C/F)とともに、その企業の将来性や現在価値(解散価値)を確認する資料として、金融機関の融資審査や株式投資などに活用されています。しかし、企業の会計処理方針によって科目明細が異なるケースも多く、同業界内の業績比較(例えば人件費など販売費や一般管理費の想定)を行う際には専ら信用調査会社(帝国データバンク、東京商工リサーチなど)から資料を取り寄せることが多いです。

また、B/Sになると資産、負債、純資産の状況が示され、資産から負債を差し引いた純資産(純額の自身の資産)から企業価値を推測することに使われます。しかし、ここに関連する企業間取引や棚卸資産計上などにおいて不正(循環取引、架空取引、資金化できない不良資産の隠ぺいなど)が隠されていることも多く、報道される企業の不祥事などは国税監査などで発覚するケースが後を絶ちません。なぜなら、その業界に対してかなり専門的かつ高度な知識が無い限り、P/Lだけから不正を読み解くことは非常に難しいからです。時には経理部門担当者が二重帳簿を作成して勘定科目を変更するなどの隠ぺい工作を図るといったことも行われるため、ある程度の規模となった企業では、経営者は信用できる人材配置(ここにも様々な課題があります)や、税理士・会計士などによる定期チェックが欠かせないとも言えます。

また、知的財産(特許権、商標権、著作権、デザインなど)を無形固定資産として計上することはあっても、人的資源(最近のAI技術者等)は資産としてではなく、一般的に経費として計上されます(直近の税制変更があればご容赦ください)。ただ、合同会社では無形財産権(漁業権、特許権、著作権など)の形での現物出資が認められており、いずれは対象となる人材の価値がB/Sに加わり、企業価値算定に利用される日が来るかもしれませんね。