令和４年度東大祝辞（要約１）
2023年04月15日
映画作家の河瀨直美さんの祝辞からコメントを要約しましたが、編集人の至らない点はご容赦ください。
多くの困難を乗り越えて今日を迎えたことの喜びを全身に受けてください。そうはいっても、明日からはその喜ばしさに胡座（あぐら）をかいていては、それ以上の成長はありません。私は昭和、平成、令和の時代を生き、常識が覆され最善を求めることの連続でした。謙虚であり、昇りくる太陽に感謝し、街角の石仏に手を合わせて祈りを捧げる、「目に見えないもの」への感謝を欠かせない暮らしを体現して育ちました。
また、あなた方と同じ年代の頃に映画と出会い、まるで玩具箱をひっくり返したようにワクワクが止まらない、精神の誕生日ともいうべき時でした。当たり前の奥に「ものの真理」が隠されていることを信じて突き進んでください。この雲は次の瞬間どのように形を変えていくのだろう…と思うなら、その探究心こそがあなたの力です。この一瞬一瞬を永遠に刻みたいと想い、こぼれおちた過去に再び光を当てる魔法、映画の神様が私に舞い降りた瞬間の出来事です。
さて、私たちの周りにはたくさんの「情報」があり、瞬時に目の前にやってきて、そして次の瞬間には過去になります。全てが魅力的であり、どの道に進んでもまた別の道があるように、あなたの未来にいくつもの可能性を示唆してくれます。また、一つの窓から見える光景を深く考察すると、その窓の向こうの「世界」とつながるという言葉を頂きハッとしたことをよく覚えています。なぜなら、自分の部屋から見える窓の向こうの景色には「真理」が隠されているのです。そしてその「真理」を知ることで、世界中の人との出会いを豊かにする、他の人には真似のできない唯一無二のものとなります。
