オフィス鴻

公平な成果配分

2024年08月29日

斜陽産業といわれる造船や鉄鋼などの製造業では次々に新しい技術開発が行われて、その勢力図が一変する可能性を秘めていると言います。日本では一時期、中国・韓国の安値受注競争に耐えきれずに衰退の一途を辿っていた造船業界で、日本経済新聞の記事によれば長い間新技術開発に多額の投資を続けてアンモニアを原料とした動力開発に成功した企業があると聞きました。競合相手はヨーロッパの2社のみで、従来型の船舶に比べてCo2排出量を極力抑えることができるそうです。最近は、株主の権利(配当性向等)が過剰に強調されている企業も多く、経営層への企業価値連動報酬(ストックオプション等)が一般従業員の生涯年収を遥かに越えるケースも珍しくなくなりました。

編集人は、日本でもエッセンシャル事業や製造業の根幹を支える現場(工場・センター・店舗など)に対するインセンティブの少なさと経営幹部との不公平感が原因と思われる事例や、同じ現場でも成果の評価軸が一定せずに評価者の好き嫌いで個人の評価・報酬に差が出てしまう事例を多く見てきました。原則論として、労働価値に見合った適正な報酬を支給していくためには、何らかのモチベーションを保つ工夫と組み合わせることが重要ですが、前後工程への配慮、スキル・貢献度に応じた適切な利益分配、既存概念にとらわれない発想を簡単には切り捨てないなどの方策が有効とされています。しかし、グループでの成果に対するインセンティブ設定を導入することは多くの課題をクリアしなければならない大変な作業であり、企業全体を俯瞰できる経営能力が試されるものと考えています。

まさに「言うは易し、するは難し」ですが、最も重要だと思うのは目標設定に尽きると考えています。自部署の目標を達成するために他部署に大きな負担を強いる幹部社員もいます。本来であれば予算・実績管理の要であるHQ(管理部門)が、生活給とインセンティブ(金銭だけとは限りません)の割合を正しく見極め人事制度として機能させることが大切だと感じています。