オフィス鴻

教職調整額の引上げ

2025年10月12日

文部科学省のHPによれば、教職調整額が設けられた経緯は戦後の公務員の給与制度改革(昭和23年)により、教員の勤務時間は単純に測定することは困難であること等を踏まえて一般公務員より教員が給与面で優遇されていたことから超過勤務手当(時間外手当)が支給されないこととなりました。しかし、教員勤務実態が超過勤務に依存していたため訴訟が提起されてきたことが背景にあり、そこで昭和47年(1972年)から特別措置法により教職調整給(俸給の4%相当額)を支給することで超過勤務不支給とのバランスを取ることとなりました。それが現在まで続いています。

その様な状況が長く続いてきましたが、50年ぶりに昨今の教員不足を鑑み教職調整給を2.5倍にする改正教職員給与特別措置法(給特法)が6月の参議院本会議で成立しました。引上げ方法は2026年から2031年まで毎年1%(合計10%)とすることになり、附則には時間外勤務を月間30時間程度に減らす、35人学級の実現、教員1人当たりの授業時間を減少することなどが明記されていますが実効性は担保されていないでしょう。そしてこれまで教員が担ってきた部活動、保護者向け窓口業務、給食費徴収、登下校対応、学校行事の準備などを民間へ委託する施策も進められています。

ただしこれまでモンスターペアレント問題・給食費の未払いなどが教員の業務負担を大きく増加させてきたことを鑑みれば、教員としての働き方を見直すきっかけとも考えられます。教員それぞれが思う教育の在り方・やりがいなどに取り組みやすくなることが想定される一方、日本の教育制度に対する抜本的対策は今後本当に改善されていくのか現時点では不明でしょう。もし単に俸給や手当を上げていくことで解決するのであれば、これまでの様々な問題(教育委員会・PTAなど)を放置してきた立法・行政・地域に対してどのような検証がされるのかが新たな日本の教育を引き上げることになると考えています。