非正規社員の賃金上昇
2024年06月15日
2007年頃、「ハケンの品格」というTVドラマが放映されていました。編集人は一度も見たことが無いのですが、非常に高いスキルを持ち契約延長拒否・休日出勤や残業はしないなど、正社員にはない働き方を選択して大変な仕事も勤務時間内に必ず仕上げるといった内容だったと記憶しています。現在は、働き方の選択も当時に比べて格段に増えている一方、正社員になることができず、やむなく派遣社員として働く方もいるようです。また、今年の大企業の春闘では30年ぶり以上の水準となる賃上げが実施されましたが、極論すれば目先の人手不足が事業継続に赤信号をともしたとも言えます。
中小企業での雇用者が約7割を占める日本では、独占禁止法に定められた優越的値の乱用の申告により取引停止を受けることを恐れた下請け事業者を中心に、諸経費(物価)は上昇していてもそれを上回るだけの価格転嫁交渉が進みずらいと言った構図も浮かんできます。また人材確保対策として若手層に厚くすることは、少子化対策の観点では方向性として間違っていない感はありますが、中高年齢層の生活という観点では子育て・住宅ローン金利上昇・物価上昇などと労働力流動化という名目の人員整理・調整(事業構造改革とも)が進行しており、日本の労働者全体が賃上げを享受できてはいる訳ではないと考えています。実際にハイクラス転職サイトの情報を見ていると、1名の採用枠に数十~数百人の応募が殺到している企業も多く、若手・中堅とてTV広告のように簡単に好待遇の転職ができるのはごく一部の方でしょう。
もう一点気になるのは、最低賃金上昇に伴う形でフルタイム非正規社員への発揮能力に応じた賃金分配の公平性に関する報道が殆どないことです。最近、大手流通業のイオングループが非正規社員の待遇を正社員並みとする人事制度を採り入れましたが、対象となるのはカテゴリーリーダー(呼称が正確でない点はご容赦ください)で全体の14%程だそうです。その観点では、全ての中小企業正社員・非正規従業員に対して最低賃金上昇率と同等以上の昇給機会提供の義務付けが必要だと考えます。