M&Aと従業員
2024年11月07日
ビジネスを進める過程では、顧客視点・顧客満足度といった視点で相手方と交渉するための準備が大切だと一般的に言われています。そして単に顧客に迎合することだけが最善策ではないことも、良好な取引関係を築くという点では非常に重要だと考えています。例えば「顧客の求めているものとは何か」「顧客がイメージしやすい言葉を使う」「事業環境の変化に対応した関係性の構築」などが有効策だと言うことです。つまり、マーケットは常に変化していることを頭に置き、取引先を含む企業内人事異動でも良好な取引関係が継続できるようにしておくことはマネージャークラスの人材ならば最低限持ち合わせておくべきビジネススキルでしょう。
一例として、日本企業のアイリスオーヤマ社の企業戦略が挙げられます。一時期、白物家電産業が他国企業との競争優位性を失って人員整理をせざるを得なかった時、同社は大手メーカーの技術者を積極的に採用して、自宅から通勤できるよう関西に研究所を開設したことなどから始まりました。その後、単なるプラスティック製の収納箱製造をメインとした企業から、従業員が作りたいと思う独創的な商品を数多世に送り出せる一大製造業へと変貌したことは業界内では非常に有名です。そしてOEMを含むM&Aに近い手法と新たな会社の人的資源を獲得したことで、従業員が作りたいもの、世の中に送り出したいものを作る職場環境を作り出したことは、従業員にとっても素晴らしいことだと編集人は考えています。
実際に中小企業経営者が体調不良や病気等で事業継続が難しくなったとしても、無理に後継者を据えずに「オンリーワンの技術」と「従業員の生活基盤を守る」意志が強ければ、その企業で働く従業員にとって、また地域経済・業界にとって事業継続自体に非常に大きな意味があることは察しがつきます。編集人が勤めていた企業も大規模合併(M&A)から既に30年以上経過しましたが、恩人である経営者の「夢」という先見の明には今でも心から感謝しています。