オフィス鴻

TSMC熊本工場

2024年06月13日

中国への過度な半導体等の先端技術供与が、コロナ禍によるSCM網の壊滅的打撃とレアメタル等の政治的利用により全世界にとって非常に大きなリスクであることを経験してから、製造業の国内回帰の動きの1つとして台湾の半導体メーカーが熊本県菊陽町に進出しました。本年12月から本格稼働する予定だそうですが、その影響で熊本県の多くの地域で「半導体バブル」とも呼ばれる好景気となり、土地・家屋の価格が2倍以上になったり、普通の農地が数億円単位の土地売却益となった人、建設関係・繁華街・タクシー業界などに恩恵をもたらしていると報道されています。また、台湾人を中心とした在留外国人が急増したことから、人手不足で時給2~3千円の仕事も珍しくなくなったそうです。

これまでの石油中心の経済が環境負荷等で徐々にその影響力を失ってくる中で、新たに半導体が戦略物資化したことで地政学的・政治学的に中国の動きが懸念されること、多額の補助金が投入されていること、半導体そのものが国家間の競争材料となっていることなど、日本国家としての半導体戦略を誤れば大きなリスク(しっぺ返し)を受ける可能性もありそうです。また熊本の経済が良くなることは歓迎に値すると思われますが、あまねく全ての県民が恩恵を受けられる訳ではなく、物価上昇による年金生活者等の生活弱者や資本力に押されて廃業する商店等も増加して来るのは時間の問題ではないでしょうか。

同じようなケースに鹿児島県の馬毛島における南西諸島防衛強化のための自衛隊基地建設が挙げられます。4年後に完成予定で、熊本と同じように物価上昇が起こる中で漁船タクシーなる種子島から馬毛島への輸送手段が1日8万円となるなど、早くもバブル崩壊後の影響を懸念する住民も多いようです。国防の最前線となることで、国から多額の交付金が配賦される中、行政サービスの拡充が図られているとのことですが、地場産業が衰退すればいずれ新たな問題に直面する可能性は否定できないでしょう。それだけ中国の影響が日本各地で起きていることに、日本の外交政策の手腕が問われていると感じますね。