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WTOでの特別待遇

2025年12月28日

今年9月、中国が世界貿易機関(WTO)に於ける途上国の地位(優遇)を放棄することを発表しました。アメリカと中国との間での関税戦争は未だ収束しておらず、この時期に国連総会でアメリカ側が求めている優遇措置の放棄に応じたことは無関係ではないと考えられます。ただ中国が常に途上国であり続けると言及したことは、その他の優遇措置・優位性の存在を排除していたいことを示唆しています。つまり必要に応じて外交カードとして途上国としての選択肢を手放していない訳ですから、いくらGDPが世界第2位だとはいっても政治環境次第では流動的なのかもしれません。

なお発展途上国の定義は一般的に曖昧であり、国連・世界銀行・WTO・OECDなどでも異なります。ちなみに世界銀行では発展途上国を低所得国・下位中所得国・上位中所得国の3つに分類しており、中国と言う国家の特性上一人当たり国民所得(GNI)データも参考程度のものでしょう。つまり異なった基準が複数存在する訳ですから、それぞれの国家や国際機関の見方次第で有利な選択をすることが可能だとも言えます。さらに例え国際機関であったとしても特定の国家等に有利な判断をすることは良く知られていますから、完全に公平性が担保されている訳ではなさそうですね。

それでは日本が国際機関に拠出している金額を外務省の「国際機関への拠出金・出資金等に関する報告書(令和4年度)」から拾い出してみると、国連へは約900億円、世界銀行へは4,000億円程となっています。最近は国連改革について日本が拠出金に見合わない待遇だとして提言を出しており、その中でも安全保障理事会での拒否権に注目が集まっています。日本政府の外交面は弱腰であると揶揄されることもありましたが、最近は世界的な信頼を得られるようになったこともあって積極的な面も見られるようになりました。これまでの日本が行ってきた信頼外交の価値が高まっている証拠のようです。