オフィス鴻

その道を究める

2024年09月29日

高村光太郎著の「道程」の導入部では、「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにさせた廣大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の氣魄を僕に充たせよ この遠い道程のため この遠い道程のため」と謳われています。同氏の父親であった芸術家高村光雲氏の影響を受けながらも、他人に頼らず新たな芸術を領域を自ら切り開いていく中で自分には手本となるべきものはなく、歩んできた過程そのものが道であるのだと編集人は理解しています。

一般社会でも他人の敷いた道を進むことは多々ありますが、そこに懸命さや問題意識があれば新たな何かを見つけることができます。たとえ、思っている以上に時間がかかったとしても、その時は誰も評価してくれなくても、方向性が間違っていない限りはどこかでチャンスが巡ってくるのだと思います。ピカソに代表されるように没後高い評価を得ている芸術家は沢山いますし、時の運が味方してくれることもあるでしょう。また、その道のプロに早くなるためには、師弟関係のような環境に加えて常に自己啓発と反省を繰り返す人の方が向いているとも言われます。編集人も現役時代(今でも身体が動くうちは、労働時間の短い現役世代だと思っています)から、自分に対する投資を様々な形で行ってきました。最も有効な手立ては相手の良い点は真似ること、悪い点は反面教師とすることだと考えていますが、振り返ってみると意外と自分の良い点・悪い点に気付くことが多くありました。

仕事でも家庭生活でもうまくいくことが続くと、ついつい慢心してしまったり、相手を下に見てしまうことがあります。特に調子のよい時ほど自制心を働かせないと、思いもよらないところから足元を掬われることも少なくありません。「その道を究める」こととは、常に探求心・相手への尊敬・感謝の気持ちをもって物事に相対することだと考えていますが、どんなに新しいことを始めても、その時点で陳腐化が始まるのだと思えれば、多少の苦労は重荷とはならないでしょう。