ルイスの転換点と賃金バイアス
2023年04月05日
イギリスの経済学者アーサー・ルイスが提唱した経済学概念に「ルイスの転換点」があります。日本では1960年代の高度成長期に農業余剰労働力が底をつく「ルイスの転換点」に到達したという説が有力です。一方で、最近の人手不足も都市部へ仕事を求める人口移転が出生率低下を招いたり、都市労働市場の需給関係が崩れていくことに繋がる要因にもなると考えられているそうです。
また、厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、2014年頃から非常に鈍い賃金上昇傾向にありますしたが、一部の大手企業では初任給を5万円程度増額する動きが始まっています。この問題を平均値(中央値とは異なる)で議論する限りは、団塊世代の引退、高齢者や主婦などの短時間労働者が年金の不足分(生活費)を賄うためであることも多く、給料が上がっていないと感じる一因でもあるのでしょう。大手企業は退職金制度改定、年間総労働時間減少(有給休暇取得など)や時間外手当削減を進めるだけの企業体力がありますが、中小企業の正規就業者や短時間労働者は労働需給の逼迫と最低賃金改定など、雇用形態に依らない一律的賃上げは容易ではありません。つまり、一部企業を除き、業績と相関関係のない政治主導の賃金上昇局面にあるとも言えそうです。
さらに個人の生活スタイルの変化への対応、少子化対策は待ったなしの課題ですが、国の借金を次世代に先送りする赤字国債発行や所得税・消費税課税強化などの財源手当が必要です。次々と発表される子育て支援策ですが、一部の年金受給者の医療費自己負担が増えるなど、選挙対策のに留まらない本来の使途目的と異なる税収移転(例えば、ふるさと税制度改革)と併せた議員立法と行政支援策の実現が望まれます。