オフィス鴻

中国の定年延長

2024年11月16日

今年9月に中国政府が2025年から段階的に法定退職年齢を引き上げることを決定しました。その背景には相当なスピードで少子高齢化が進んでいることから労働力不足が起こる懸念があり、出生率の低下への危惧したことが背景にあるようです。最近の中国経済に関する報道を見ている限り、多くの外資系企業が人件費等の高騰や政治的圧力で従業員が理由なしに拘束されるなど、もはや中国での事業継続リスクは許容上限を超えていると考える国・企業があります。また国営・民間企業倒産も相次ぎ、ホワイトカラーを目指す若年層の就業場所が減少したことで失業率が大きく上昇しているそうです。それでも年間出生者数は約900万人と日本の70万人に比べれば圧倒的に多いのですが、長らく一人っ子政策を続けていたことで男女比に偏りが生じ、生産年齢人口もマイナスが続いていると言われています。

なお、中国政府の発表数字を鵜呑みにすることにはリスクが伴いますが、少なくとも社会保障制度の根幹に手を付けなければならないほど深刻な状況に陥ることが懸念されているようです。具体的には女性は50歳から55歳に、女性幹部クラスは55歳から58歳に、男性は60歳から63歳へと15年間かけて段階的に移行する計画だと言いますが、10年後には公的年金積立金が枯渇するだろうと中国社会科学院や国連が推計しているようです。実際の中国年金制度下では、従業員基本年金の保険料負担は事業主が16%、従業員は8%で日本の厚生年金に近いようですが、支給金額に関する資料は見当たりません。実際は事業主・従業員の納める保険料で高齢者への年金支給を支えている構図が増加しているようです。そのように考えると、若年層を中心として内政問題に対する不安から批判が上がること(天安門事件等)を当局が抑え込む政策のようにも見えます。

厚生労働省の資料では日本の国民年金加入率は2023年度で83%で、現在の60歳から65歳へと支給開始年齢が伸びることも可能性としてありそうです。