円安と日銀為替介入
2024年06月17日
前日銀総裁の黒田氏からバトンタッチを受けた東京大学名誉教授で経済学者の植田氏が新総裁に就任しました。アメリカ国内でのインフレを助長するかのようにアメリカ国債の格下げ、予算案をまとめる立場の下院議長解任などの悪材料が積み重なり、アメリカFRB(連邦準備制度理事会)は長期金利指標である10年物国債の利回りが5%台になったことはアメリカ財政の健全性について金融市場が疑問視している証しともとれるようです。また、日本でも長らく続いている金融緩和策が昨今の円安傾向、物価上昇(インフレ)などで金利上昇の方向性に舵が切られました。
今年の春闘で高い賃上げが行われるのは一部の大手企業が中心で、多くの中小企業従業員にまで恩恵は廻らない可能性が高いです。また、アメリカでインフレ圧力からさらに長期金利が上昇すると、円安加速の可能性もありそうです。現在の改正日銀法の下では海外では中央銀行(日本は日銀)が担う為替介入権が財務省にあるため、円安収束(適正水準)には物価安定を担う日銀の金融政策(物価の番人であり、長期金利の許容上限を1%まで引き上げられる)だけでは限界がありそうです。また、国際社会では通貨安を目的とした為替介入は行わないルールで、IMFも日銀の金融政策を支持しているので、しばらくは1ドル150円台が続きそうです。
なお、日本の企業で働く一般的な労働者の所定内給与の上昇率は、日銀の毎月勤労統計調査で平均2%弱の水準で伸びていますが、一方で所定外賃金(時間外手当等)は3%程度の減少傾向にあり、いわゆる手取り収入の減少と物価高による消費者の二重苦になっているように感じます。コロナ禍で停滞していたインバウンドや国内消費は回復途上段階と言われており、岸田政権が期限付き所得減税策の検討開始を指示しましたが混乱が続いていることが報道されました。時を同じくしてインボイス制度がスタートし、企業の事務処理負担増、個人事業主の取引停止(下請法)など、笊から水がこぼれるようなことが起きているようです。