オフィス鴻

富裕都市東京

2025年04月05日

東京都知事が都内で採用された教育関係職(教師)3,000人に対して、150万円の奨励金を今年4月から支給することを決定しました。このような金銭給付については、必ず実施以前に該当していた職員とのバランスを取らなければ、却って人員不足が加速する危険性をはらんでいますが、その点を説明する資料は見つけられませんでした。特に奨学金返済等を目的とした給付自体は良いことだと思いますが、多くの法人税収入がある東京都だからこそできる訳で、今後も更なる東京一極集中の構図が進むことでしょう。

編集人はこの問題も重要だと思っていますが、地方自治体から見れば若手人材の流出に拍車をかけるようなものであると同時に、就職氷河期世代と比べて現在の若手層に手厚い政策の是非や一般企業との若手人材獲得競争に多額の税金をつぎ込んでいくことは、もっと議論されても良いと思っています。しかし、言い方を変えれば国が地方創生施策を進めている中での人材の奪い合いだとすれば、今後これまでの日本で行われてきた施策に対して誰がそのツケを支払うのかと言えば、若手・中堅世代でしょう。また、首長の強大な権限の下では自ずと税収の多い都市部の方が政策立案・実行に有利であることは否めません。しかし、仮に奨学金返済に給付金が使われることを想定しているならば、明らかに不公平感が残ると思われます。

例えば2004年から国立大学法人化が進められ、今年から国公立大学・大学院に在籍する生徒の授業料が引き上げられました。また、文部科学省の資料によれば、「当面は現状の制度の根本を維持しつつ、必要な改善や充実を図ることが重要であり、①教育研究力の強化、②ガバナンスの強化、③財務基盤の強化の三点から改善方策を整理」するとしています。しかし実態は奨学金まみれの大卒者が増加して社会問題化している、研究費に廻せる財源がないなど、将来の日本を憂うような事態がいくつも報道されています。本当に高度人材を育成したいならば、まだまだ検討すべき課題があるように感じます。