年収の壁と医療
2025年02月05日
昨年の衆議院総選挙での争点の中心であった政治活動諸手当の改正、年収の壁の改定が与野党間で協議されています。国会議員に月額100万円支給される「調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)」、地方議員に支給される政務活動費(月額50万円前後)に対して、2015年から全ての都道府県・政令市・中核市で領収証の添付が義務付けられていますが、国会議員の使途公開や未使用分の返還について法改正は進んでいません。民間企業に勤めている方が普通に考えれば、領収書のない経費は会社から認められず、また出張時の仮払金精算等で過不足分を精算することは当たり前ですが、国会議員自らが既得権益に対して法改正に消極的なことも理由にあるようです。
また、年収の壁問題は「103万円の壁」がクローズアップされていますが、これは所得税・特定扶養控除面での制度であり、国民目線での平等性からすれば「106万円の壁(厚生年金・健康保険加入)」、「130万円の壁(国民年金・国民健康保険加入)」、「150万円の壁(配偶者控除減額)」の方が課題が大きいでしょう。簡潔に言えば国民の3大義務の内、「納税」「勤労」の2つが日本の社会保障制度設計・維持の根幹にある以上、特定の者だけが優遇される不公平と社会保険料等の相応の負担を是正することは当然だと思われます。もちろん、社会状況の大局的変化も加味する必要はありますが、義務を果たさずに権利だけ主張しているような現状では、本当の意味での社会保障改革は先送りされて進まないと考えています。
毎年、年末の繁忙期に近くなると多くのパート従業員が年収調整のため仕事を休む(しない)選択をしますが、この壁を越えないよう最低賃金を上げれば年間労働時間が減少することは明かです。労働力不足だというならば、年収1,000万円の世帯主と年収500万円×2人(共働き)では、税額・社会保険料に大きな差があることから、いっそのこと世帯年収換算による制度改定に合理性があるように思います。