新たな年収の壁とは
2023年10月04日
最低賃金が大幅に引き上げられたことで、「年収70万円」という新たな年収の壁が出現するという北村社会保険労務士(ブレイン社会保険労務士法人代表)の見解を述べた記事が目に留まりました。結論から言うと、扶養控除の範囲内(標準報酬8.8万円未満)で継続して第三号被保険者となるためには、賃上げ分に相当する労働時間を少なくする必要があり、一時的に企業に助成金を支給しても翌年から再び一部短時間労働者の労働時間調整により人手不足が顕著になること、一時的な財政出動による現行制度との矛盾が生じることなどが挙げられていました。
編集人は30年前に結婚しましたが、当時から戦後50年を経て比較的公平性の高い世帯合算所得による課税・社会保険料納付と給付方式が高齢化社会・少子化対策などの課題を解決できる施策のように漠然と考えていました。前回の参議院選挙でも、高齢者の投票率の高さ(政権票田)、一部宗教団体との隠された課題の表面化、既得権を巡る世代間の対立構造などへと移行する可能性が見え隠れすることなど、これまでとは違う争点も浮き彫りになりましたが結果は与党優位となりました。最大の課題は年金保険料を払わない働き方を選択しても年金支給される点であり、多くの年金保険料納付者(厚生年金受給資格者)との不公平(アンフェア)が解消されないことにあります。
本題に戻りますが、第三号被保険者については制度導入(1986年)以降共働きの増加等で徐々に減少しています。ただし、基礎年金(1階部分)を支払わずに、厚生年金(2階部分)への加入・受給権が生じますので、結果的により有利な制度変更になることも考えられます。また、仮に標準報酬額を引き下げたとしても自営等の基礎年金受給者との間にアンバランスが生じてくること、移行措置である1人当たり年間50万円の助成金を受け取る企業から従業員へ正しく支給されることへの監視が必要なこと、さらにこれまでのように時間調整を行う労働者がいれば労働力不足の根本的解決にはならないことなど、非常に根深く危険な問題だと感じています。