新ビジネスと不便さ
2024年07月13日
ピーター・ドラッカーが提唱したマーケティング理論の1つに「顧客の現実・欲求・価値を理解する(不便を解消すること)」があります。更に、この考え方を応用展開したフィリップ・コトラーの理論に「価値は顧客が決める」、つまり顧客と長期的に良好な関係を築くことが継続的に企業に利益をもたらすとされています。言い換えれば、顧客の状況を理解し製品やサービスを顧客に提供できれば、価格競争に巻き込まれずに商品はおのずと売れていくタイプの戦略性が重要だと考えられるでしょう。しかし、言うは易し行うは難しで、そんなに簡単に価値あるビジネスモデルを誰でも作ることはできないでしょう。
また、最近のロボットや生成AI研究の分野でも、非効率で手間がかかったり、自分の満足感・主体性などに繋げるために、敢えて不便を組み込む研究がおこなわれていると聞きます。もちろん、人によって不便の感じ方は異なりますが、意図的に頭を働かせることが出来るという観点では生産性向上・人手不足解消が主流の開発とは一線を画するものでしょう。あるクイズ番組では、何らかの法則性(不便)を自分で探し当てて正解を導く問題が出題されていて、頭を働かせる、満足感を得るという点では似たような発想だと思いました。
今から50年、100年先の未来の生活はどのようになっているのか殆ど想像できませんが、少なくとも生存に不可欠な栄養素を摂取することは無くならないように感じます。例えば、都市部では地産地消型の生鮮食品工場、蒲鉾の原料をベースにして作られた本物のカニ身と味も見分けがつかない食品、マグロの食感や味を模したゼリー状の疑似食品などは既に市場に出回っています。また、何らかの方法で人間同士がコミュニケーションを図ることの重要性も増してくる可能性があります。実際に多言語翻訳ソフトが開発され、細かなニュアンスを必要としない日常会話レベルならば旅行等で十分コミュニケーション機能を発揮できます。そのように考えると、人間の本能的に欲することを手助けするような新ビジネスが社会の主流になる日も案外近いのかも知れませんね。