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産業医と企業への対応

2024年08月01日

産業医( Occupational Health Physician)とは、労働安全衛生法第13条により常時50名以上の労働者が働く事業場で、労働者の健康管理等を含めて専門的立場から指導や助言を行う日本医師会が認定した医師のことで、具体的職務内容は労働安全衛生規則第14条で定められています。原則として医療行為は行わず、3大管理(健康管理・作業管理・作業環境管理)のうち、健康管理分野でのコンサルタント的側面を担っています。メンタルヘルス、過重労働などについて産業医は依頼主企業へ意見書を提出し、企業はその意見書を基に従業員の健康管理を行います。

一方で、産業医は日本全国で約10万人のうち、8割近くが嘱託産業医として毎月契約先の事業場訪問を行います。なお、嘱託産業医の月額報酬の相場は諸条件により様々で、企業独自で産業医を探せない場合は斡旋事業者から紹介してもらうケースもあり、選任の届け出をする必要があります。以前は、報酬を低く抑える代わりに実質的な名義貸しに近い選任行為も見られましたが、最近はコンプライアンス遵守等の観点(労働基準監督署の巡回等)から殆どの対象事業場で正しく運用されているようです。しかし、日本医師会は産業医認定に必要な受講証明(単位シール)がフリマサイトで売買されている事案があったとして、警察と相談していることを明らかにしました。

また、産業医に依る面談は、休職者・メンタル不調者への状況把握、復職判定以外にも、本人が希望した場合や、会社が必要と判断する人に対して面談を実施して、助言等を行います。ただし、最終的には事業主判断の範疇であり、中には意見書の主旨と異なる意図的な退職勧奨に該当するような不適切運用をする企業もあります。従業員は正しい診察・治療(二次検診などを含む)を受け医師の診断を受けておくことが重要で、もし納得がいかなければ所轄の労働基準監督署への相談や労働審判なども選択肢としてあることは知っておきたいところです。