オフィス鴻

研究者の無期雇用問題

2024年02月24日

昨年3月、通算10年を越えて非正規(有期雇用契約)で働く大学や研究機関の研究員のうち、改正労働契約法にある無期雇用転換権の行使により80%が無期雇用等で継続して働けるようになったと文部科学省が発表しました。この問題はかなり以前から理化学研究所の若手職員が6年半の条件で卓越研究員制度の採用と聞いていたのに4年半の有期雇用契約(通常は10年が一般的)満了後に雇止めさてたことに関連して、10年間の有期雇用契約研究者が同じように雇止めになる可能性が高いとして報道されました。また、理化学研究所以外でも大阪大学などで訴訟が起こされており、卓越研究員制度の主旨(海外への人材流出防止)とは異なる採用方法などが判明しています。

もちろん、雇用する側にも理由はあるのでしょうが、優秀な能力がありながらも研究を行うポスト(正規雇用)が少ないことから、日本から海外へ渡る研究者も少なくないようです。また、日本人のノーベル賞受賞者の言葉に、基礎研究(おそらく5年~10年くらいと想像します)は地道な作業で短期間で容易に成果が出るケースは少ないとあったことを覚えています。2014年に3人の日本人が青色発光ダイオード研究・開発でノーベル物理学賞を授与されましたが、その中の1人である中村修二教授が勤務先であった日亜化学工業に対して発明対価として8億余円を和解金として受け取りました。おそらく、日本での研究者の待遇改善と新たな人材が研究に興味を持ってくれることを期待してのことだと思います。

その後、中村教授は米国籍(市民権)を取得した理由について、「米国籍がないと軍の予算がもらえず、軍に関係する研究もできない。」と説明されたそうで、日本の研究予算(企業への金銭面での国家支援を含む)の少なさ、研究者の置かれている就業環境、今後のいわゆる理系人材と研究のあり方(現在の政府のIT化混乱、生成AI等での出遅れ)に対して、訴訟と渡米という形で一石を投じてくれたのだと考えています。