オフィス鴻

納税と社会保障(1)

2023年05月22日

組織人事では「自分は昇格(昇給)してないのに〇〇さんは昇格した」といった不満がよく聞かれます。仮に100%全員が納得できる人事制度を作れたとしても、社会の変化に応じて常に最適化することは至難の業であり、人事制度は作った時点から陳腐化していくものだと編集人は考えています。また、2000年に施行された定年再雇用制度も、あくまで企業側の雇用義務の範囲であり、役職定年と同じく一部の人を除き給料が下がることが前提です。令和3年に、70歳定年制と呼ばれる「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」が一部改正されましたが、実質的には就業選択肢の提示・努力義務の範囲に留まりました。

因みに、最近は年収1千万円超の求人を目にする機会も増えましたが、ここ30年間ほど日本の社員の年間所得は平均450万円前後(東京都の標準生計費も同じ)で大きく変化していません。さらに中央値は300万円台とも言われています。ただし、「平均値」と「中央値(メディアン)」では計算方法が異なりますので、年収1千万円超の世帯でも子育て行政支援が受けられる制度変更は、数年前には幼稚園・保育園の待機児童問題など、働くこと自体が社会保障の障害となる矛盾があったことを考えれば、一定の評価に値するでしょう。

また、一部大手企業では若手中心に賃上げが実施されていますが、社会全体で見ると可処分所得は増税(消費税、復興税等)と社会保険料増加により減少しています。個人責任でない世代間格差の遡及までは無理にせよ、国策として可能な範囲で公平性・相互扶助を担保する必要性を感じます。企業組織では、人事・評価・給料・昇給・昇格などなかなか納得・解決しがたいこともたくさんあり、報酬(納税)と社会保障のあり方との整合性があれば良いのですが、必要な財源を確保するには恐らく消費税、年金、医療制度の改定などに国民の負担が増加する方向にあるように感じます。