オフィス鴻

中小事業者のM&A

2024年08月23日

先日、M&Aの波が中小企業にまで及んできていることを実感する出来事がありました。ある有名な国内最大手のM&A仲介会社から、このブログ掲載場所を提供してくれている親族経営の企業をM&Aしたい事業者がいるとの連絡があり、代表者に替わってM&A経験のある編集人が対応することになりました。結論から言えば、DD(デューデリジェンス)で査定した場合の企業価値(将来価値を含む)を編集人が算出できること、現預金・取引先・ビジネス・人的資源等を計算すれば解散価値(上場会社のPBRに相当)の数倍の価格がつくであろうと結論付けました。しかし、ある理由で買収先が高値掴みするリスクがあることを正直にお伝えして、先方には丁重にお断りいたしました。

その理由とは、今後AI技術により低スキルの人材でも生産性を大きく上げることができる一方で、高付加価値人材の有している能力をタスク別に分解していくとAI技術をもってしても、人脈・人間関係・信用など数値に現れない価値を代替できないことが挙げられます。つまり無形資産(会計区分とは異なります)と呼ばれる価値はその人自体の価値であって、容易にM&Aによって獲得できる訳ではないと考えているからです。言い換えればコンサルタント職と似ている点は、企業発展に価値あるものでなければ経営者にとって最善の選択肢だとは限らないと思うのです。M&Aにより新たなノウハウが獲得できても人材を使いこなせなければ価値を生まないことは明かであり、最近のM&Aビジネスの方向性には少々疑問の残るところがあります。

ただし、M&Aビジネス自体を考えれば上手く事業継承ができるメリットも大きい反面、仲介手数料や利益相反取引き、株主構成等によっては売り手側のデメリット(相続税・買う始期譲渡益課税など)があることも考慮する必要があります。もし、M&A提案を受けた場合には、上記事項を念頭に置きながら従業員の将来の生活にまで考えをめぐらした上で検討することをお勧めしたいと思います。