オフィス鴻

賃上げ論調の矛盾

2024年08月13日

ある労働団体が、最低賃金を1,500円にするとの目標を掲げて国会周辺でデモ行進を行っていました。この団体は厚生労働省への要望として全国27都道府県の組合員の生活実態調査から計算したところ、最低限生活に必要な費用を得るには時給換算で1,500円が必要であるとしています。また、標準的生計費は大都市・地方都市に限らず地域による違いはほとんどなかったとして、地域間の格差が地方からの労働力流出を招き地方は疲弊すると説明したそうです。計算根拠は明かにされてはいませんが、東京と地方の生活費が変わらないという主張には違和感を覚えました。もし、地方との格差が無いのだとすれば路線価を基準とした固定資産税なども同額にしなければ矛盾が生じますよね。

今後、年間3%の最低賃金上昇により2030年代半ばを目途に1,500円に到達するであろうことは、岸田総理の発言とリンクする部分があります。さらに、中小事業者がそれだけの賃上原資を確保する方法、年金受給者・生活保護世帯の生活水準や社会保障費抑制については触れられていません。編集人には、なぜ全国一律化する必要があるのか、そのための施策はあるのか、公平性(相互扶助)の原則が自己責任とな無関係なのかが良く見えてこないのです。実際、東京中心部では時給2,000円でも飲食業の人手不足感は解消されておらず事業継続に赤信号が灯った事業者も少なくありません。

もう1点、現在1,500円以上の時給に該当する就業者が最低賃金引き上げ率と同水準の賃上げが多くの企業で行われているかが気になります。最低賃金が毎年上がっても、そのしわ寄せが他者に及ぶ(労働生産性・スキルに関わらず賃金を据え置くなど)ならば新たな可処分所得格差が生じることでしょう。日本銀行は物価上昇率と賃金上昇率を見極めながら為替水準等をコントロールする方針の様ですから、年収3~4百万円程度の中間層の不満を抑える公平性(税・社会保障費負担・子育て税など)も同時に訴えて頂きたいと思います。