オフィス鴻

非正規従業員の処遇

2024年06月19日

厚生労働省が中心となって正社員・非正規社員の不合理な手当格差に対して企業への是正指導が本格化してきました。その背景には、2018年の最高裁判決(ハマキョウレックス訴訟、長沢運輸訴訟)による当時の労働契約法第20条(不合理な格差の禁止)への判断、東京メトロ訴訟などで続けて枠組みがが示されたことによります。しかし、最低賃金の引上げ、大企業を中心としたベースアップに関しては大きく報道されることはあっても、既存の非正規社員の処遇改善(特に時給・基本給)が進んでいるという話はほとんど聞きません。

ここで問題視されるのは、同一労働・同一賃金についてですが、例えば正社員と非正規社員の職務内容に明確な差があるのか、職場環境など個別の事情をどのように判断するのかは企業によって異なることです。つまり、最低賃金が上がって自動的に昇給する非正規従業員もいれば、正社員と同様の業務を行っていても全く昇給しないケースが闇に隠れている可能性がある訳で、その上で基本給・賞与などが事業所等によって異なることに対するバランスに対して考慮することを企業の努力義務と定めているにすぎないからです。読者の皆さんの周りでは管理者次第で評価基準もなく昇給率・昇給額が異なる非正規従業員がいることに対して、思い当たることはないでしょうか。

同じように、計画的に労働時間調整(残業稼ぎ)をしていると当然ながら時間あたり生産性は低くなります。仕事が正確で定時間内で終わる生産性の高い従業員からしてみれば、不公平以外の何物でもないでしょう。本来ならば、各企業が労働局等の指導・是正を受けなくても自律的に進めるべき経営マターだと考えますが、仕事のできる従業員が突然退職するとその後に業務上のトラブルが頻発するケース(退職者の悪意ではなく、管理不適切が原因)もあり、当該企業にとって大きな痛手とも言えます。