オフィス鴻

130万円の壁

2025年04月09日

昨年10月に実施された衆議院総選挙での政策論争には「政治とカネ」「103万円の壁」問題が含まれていました。いずれもこれまでの政権下では何となく議論を進めるような状況でしたが、国民の義務の1つである「納税」との公平性担保が含まれているように感じます。「政治とカネ」の問題は有権者の投票行動(といっても投票率は53%に過ぎません)によって、政党の議席数と言う定量的な形で民意が反映されていましたので、今回は「103万円」の壁について有識者の意見等も参考にしながら個人的な考えを綴っていきます。

現在の日本は円安・物価高・格差・少子化・労働力不足・環境問題といった大きな課題を幾つも抱えています。戦後から復興していく段階で様々な施策が取り入れられてきましたが、現状には不適合な法律も数多く残されています。国民の三大義務である「教育」「納税」「勤労」のうち、少なくとも納税・勤労が絡む103万円問題は受益者間での不公平性があり、優先的に解決していこうとする主張には一定の合理性があると考えています。その裏側にあるのは、社会保障制度維持への財源確保と第三号被保険者(専業主婦)制度の形骸化が進んでいることに起因していると思います。普通に考えれば、納税逃れに近いこの制度の改定(または廃止)は、業務委託や自営業で働く方と比べて、社会保険料や税金の負担を行わずに恩恵が受けられることへの国民の不満の表れでしょう。

103万円の壁を越えれば所得税の支払い義務が発生しますし、さらに130万円を超えれば社会保険料の納付義務が生じます。厚生労働省の資料では2020年時点で800万人近くの第三号被保険者がいますが、共働き家庭が増えた結果減少傾向にあると言われています。また、老齢基礎年金の平均受給額は年間67万円程度ですから、厚生年金や十分な老後資金が無い方が高齢でも仕事を続けたり生活保護を受けなければ生活できない状況にあります。今後、どのように推移していくのかをしっかり見守りたいと思います。