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ツバル住民の移住

2025年11月17日

地球温暖化を起因とする気象状況変化による海面上昇が住民の生活に大きな影響を及ぼしつつあるツバルは、オセアニアの9島から構成される国家です。現在の人口は約10,000人ですが今後30年程度で満潮時には国土の大半が海水面を下回ることが予想されており、現在も洪水・海水浸水などの被害が発生していることから海外での就労や留学、移住などを検討する国民が増加していると言われます。また生活に不可欠である飲料・生活用水は井戸に海水が流れ込んでいるため実質的に井戸は使用できず、ニュージーランド政府が提供した1万リットルの雨水タンクを使っているそうです。

その他にも塩害によってツバルで栽培できる農作物やヤシの木が減少していることから、長年にわたって受け継がれてきたツバルの文化・習慣などが徐々に失われている現状があります。そのため政府は津波から逃れるための避難訓練、メディアによる避難体制確保などの施策を講じているものの現実として国土を捨てて国民の生命を守ることが優先されているように感じます。一方で地盤が脆弱なサンゴ礁の島に空港滑走路を建設したことが地盤沈下を招いたとの指摘があり、国連の調査報告では地盤沈下だけでは説明できない現象もあることから海面上昇が主原因であるように思われます。

そのような状況下でオーストラリア政府が特別移住ビザ(年間300人程度)を発表したところ、国民の約半数が応募したそうです。この背景には2023年にオーストラリアにツバルの人々が安定的に移住できる法整備(ファレピリ連合という条約)があり、今後は水没の危機と住民の移住が現実となるでしょう。また日本とは外交上の懸念はなく、経済面での協力関係は少ないものの環境分野での取り組み・交流は行われています。ただツバルの人々がオーストラリアでどのような生活を送っていくのか、文化・習慣の継承はできるのかなど単なる待遇面だけではない多くの課題があると考えています。