ビッグモーター社事件
2023年09月11日
ビッグモーター社による自動車保険不正請求事件に関連して、さまざまな不祥事が次々と発覚しています。顧客からお預かりした修理車両(顧客の財産)に故意に傷をつけ1件当たりの工賃・部品粗利などの過大計上で、不適切な保険金請求を繰り返す手口が明らかになってきました。また、過大な目標設定、いきなり降格処分となる恐怖人事、上司のパワハラも頻繁だったようです(知り合いの元社員から聞いていました)。これは、過去に東芝(不正会計)、スルガ銀行(不正融資)などで発生した「上位者への忖度と保身」という組織の弊害が表面化したに過ぎず、非上場会社だから起きたことではないと思います。
一方で、損害保険会社からの出向社員受け入れが癒着に繋がる可能性は素人目にも明らかで、以前から自動車関連業界で使われる不正手口の1つです。国土交通省(自動車整備事業)に続いて金融庁が動き出したことで、損害保険会社は被害者から一転共犯者として捜査される側になりました。このような意図的な器物損壊は犯罪責任を負うことになりますし、精神的ダメージから使用できない場合にも弁償が必要です。また、店舗前の街路樹伐採や除草剤散布なども含めて不正にかかわった社員が刑事罰を受けることもあり得るなど、事件発覚に依る利益と引き換えるにはあまりにも大きな代償でしょう。また、内部通報する社員も複数いたようですが、まだまだ日本企業では社内での不正告発ハードルは高く、その心中を察するに余りあります。
また、1997年に自主廃業した山一証券(簿外債務、損失隠し)の野澤社長の「社員は何も悪くないです」との発言と比べて、今回のビッグモーターから退任した兼重社長の謝罪会見での発言(知らなかったことと自分の正当性を主張)は、まじめに働いている多くの従業員と取引関係企業(400社)への決別をも意味している気がします。既に全取引銀行が融資借換交渉を拒否したことも報じられ、デロイトトーマツ社のコンサル部門が経営助言に入るようですが、社内での自力再生は無理な状況なのかと心配です。