ライドシェアとタクシー業界(2)
2023年11月28日
9月にディケア施設に通う方が送迎車にひかれ死亡するという、非常に痛ましい交通事故が起きました。事故の原因は送迎担当者の運転操作ミスだったようですが、営業目的での有償運送ではなく、白タクと異なり道路運送法の禁止行為に抵触していなかったようです。ただし、当該被疑者は年齢を偽って介護施設に応募・採用されていたこと(申告:67歳、実際75歳)が判明しており、運転技量の衰えが事故原因とも考えられます。
一方、政府はインバウンド需要回復と高齢化等によるタクシー乗務員不足対策として、全国的規模でのライドシェア解禁について議論が始まっています。規制業種として紆余曲折を経ながら変遷してきたタクシー業界ですが、ライドシェアは同業界の競合関係にあり、特に安全管理面等の課題から国土交通省・業界団体から慎重な議論と反対意見が寄せられる可能性が高いです。また、まだ極めて少数ですががタクシー乗務員として働く外国人もおり、観光地等での専用配車(日本語以外での意思疎通)など、検討すべき事項は多岐にわたるでしょう。タクシー認可台数の過剰(銀座や新宿歌舞伎町の繁華街等では客待ちのタクシーで2車線が塞がれていました)が低賃金を招きましたが、人命にかかわる職業である以上神奈川知事の発言(推進論)にあるような需給調整で済む課題ではないように感じます。
編集人が考える最大の課題は、利便性と引き換えに事故や犯罪に巻き込まれるリスクの排除、契約書の取り交わし(乗り逃げ、適正料金の収受・領収書の発行)、雑収入としての税務申告の有無(インボイスにも関連します)などに加えて、地方過疎地での個人タクシー免許の年齢上限引き上げ(原則75歳から80歳)が検討され、高齢者の免許更新・返納制度と矛盾します。一旦免許返納した高齢者も含め、一時的な施策より人命最優先かどうか精査が必要だと思います。