医療従事者への賃金未払い
2025年10月20日
北海道にある医療法人で2か月間給料が未払いになっていることが、民放報道で明らかになりました。問題の根底には、診療報酬引き下げや物価高騰などがあるものと推測されていています。また一部には過剰な設備投資や趣味への多額な支払いなどによる経営の行き詰まりを指摘する声があるものの、編集人がHP等を調べた範囲では噂の範疇を出ていないようです。理事長は「地域医療を守るために病院の稼働は続ける」としていますが、少なくとも職員に対する2か月に及ぶ給料未払い以外にも諸々の支払いに窮していることが想定されますので、再建には大きなハードルが立ちはだかりそうです。
職員の中には入院患者を含めた診療が中止してしまうことを危惧するあまり、職業的倫理感から無給で働かれている方もいると聞きます。しかし数か月以上も倫理感だけに頼って事業を続けることが困難なことは容易に想像できますし、いずれ職員の生活自体が立ち行かなくなることは自明の理でしょう。人口が多く医療機関も豊富な都市圏とは異なる地方ならではの事情があることは理解できますが、都市部と同じ医療水準が地方で維持していくのかは今後の医療行政のカギになりそうです。実際に同市では令和に入ってから市民病院の医療従事者が大量退職しており、現在経営再建の途上にあります。
最近になって医療機関の倒産情報を目にすることが増え、帝国データバンクの調べでは2025年上半期の倒産件数は35件(歯科14・診療所12・病院9)に上っています。また倒産原因は医師の高齢化・後継者不足、建物の老朽化(法定耐用年数39年)・建替困難などとされていて、以前にこのコラムでも取り上げた国立大学病院の慢性的な赤字(2024年度285億円)も大きな課題です。その調査では過去17年間で材料費が1.7倍、医薬品が2倍になり、さらに診療報酬の傾斜配分と言う影響もあることから、地域ごとでの医療最適化対策が待った無しとも考えられています。