オフィス鴻

政府備蓄米のその後

2025年06月25日

今年5月に農林水産大臣がある講演で「米は買ったことがない」「自宅の食品庫には売るほど米がある」との発言がきっかけとなり、米高騰対策(政府備蓄米放出)が実効性を伴っていないと国民の反発を受け辞任しました。その後任として就任した大臣は「米5kgを現在の4千円台から2千円台に下げる」として、より具体的な施策を発表しました。例えば政府放出米に上限を設けず、また中間流通段階で滞留・高値誘導していると言われる諸制限を撤廃しています。この報道があった翌日にはJA長野がすぐに米を2千円台で販売し始めており、高値掴みして流通させていなかった事業者が損切り覚悟で市場に流通させる可能性が拡がっています。

消費者向け販売価格が2年前に比べて約2倍以上に高騰している現状を鑑みれば、国民の生活に直結する問題としてこのような施策がもっと早く行われてこなかった裏側には関係者の利害関係・思惑を優先した構図が透けて見えます。特に減反政策やJA関連法令を見直す絶好の機会であるとともに、米生産者に対する適正な農政を進めるチャンスとも言えるでしょう。食料自給率がカロリー換算で40%を切っている日本ですから、主食である米の確保は最重要課題の1つであると考えています。一方オーバーツーリズムによる消費拡大以外にも一部では中国への輸出が指摘されており、恣意的な情報操作もゼロでは無かった気がします。

今後、農林水産大臣のコメント通り消費者の元に米が行き渡ったとしても、かつてのような価格に戻るとは考えずらいでしょう。またこれまで編集人が想定していた2~3割程度の価格上昇は消費者も受け入れる必要があると考えています。その理由は諸物価高騰の影響でコメ農家の生産コストが上昇していることが挙げられます。先述のように流通業者が市場への流通を阻害していた可能性を考えれば、米流通業界にも新たな再編が行われるだけでなく高価格を目論んでいた事業者はいずれ何らかの損害を被るように感じています。特にJA改革は待ったなしの状態だと考えられますね。