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新ふるさと納税の課題

2024年06月25日

昨年10月から総務省が管轄する「ふるさと納税制度」が改定されました。2008年にスタートした時点では善意の寄付として3万人が利用した同制度ですが、2015年には確定申告不要の自治体間での返礼品競争に変容し利用者数は100万人、金額は1,500億円を超えました。2020年には利用者900万人、金額は1兆円を超えたと言います。その結果、仲介サイト運営企業には1,500億円が手数料名目で渡り、富裕者層は節税策の一環としてカタログギフトから選ぶ感覚となったことで、横浜市では270億円強、名古屋市・大阪市・川崎市も100億円以上の税収が流出しました。流出超過の自治体には政府からの助成はあるものの本来の意図とは異なる結果となった(実際には予測していた可能性も否定できません)ことから、総務省も次々と新たなルールを設けて仲介サイトと富裕層が潤う「官製通販」と揶揄されるこの制度の課題解消へと動き出しています。

特に年間50万円以上を超えた寄付金額の50%が所得税法上の一時所得扱いとなり課税対象となるため、多額の寄付(実際は返礼品目的が殆ど)をした場合で所得申告をしていない場合に税務調査を行い追徴課税するケースが増えているようです。その一方で、農産物・海産物の返礼品を準備しきれない自治体が出てきたり、他自治体に帰属している返礼品を掲載したりと、行政側の安易とも思える寄付金獲得スキームの実態が徐々に明らかになってきました。

また、法人に対しては新型コロナ対策・災害対策・インフラ整備等の名目で超過課税する自治体もあり、個人所得には災害復興税(東日本大震災)も課税されています。急激な円安による輸入価格上昇と物価高に加えて社会保険料値上げ等により可処分所得が減少しているため、返礼品で少しでも家計の足しにしたいとの気持ちは理解できないこともありません。しかし、TVコマーシャルが頻繁に流されるほどの「ふるさと納税制度」の意義や納税者の良識の有無で、近い将来施策に対する評価がなされるのだと思います。