生活保護減額訴訟
2025年10月21日
今年6月27日最高裁第3小法廷は2013~2015年にかけて生活保護の基準額を引き下げたことに対する上告審で、厚生労働省側に引き下げ判断過程・手続きの過誤・欠落があったとして生活保護者側の勝訴が確定しました。これまで地裁・高裁では判断が分かれていたものの最高裁判決が出されたことで、日本全国に200万人いるとされる生活保護者と制度の在り方について見直しが進められると推測しています。生活保護に対する国民の意見が多様化してきたことを鑑みれば画期的な判決とみる識者もいる一方で、その背景にある様々な課題を考える契機とも言えそうです。
その中でも原告を指示してきた団体等が「生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と議論を求める(生活保護注意報の発出)」とのコメントを出しています。日本が法治国家である以上この最高裁判決の重みを粛々と感じまていますが、編集人がいつも思っていることは「本当に支援が必要な国民が、生活保護制度を利用できるのか」「法律に明記された文化的生活の水準とは何か」という2点につきます。もし本当に生活保護が必要な国民に行き渡らないのであれば、この2点を明確にしていかなければ支援団体が主張する生活保護に対する偏見・差別等は無くならないのではと言う問いに過ぎません。
そして今後この判決を受けて、どのように早期決着を図っていくのかも重要な視点でしょう。そこには国民と生活保護受給者の相互扶助に対する合意形成が不可欠だと編集人は考えています。これから20年後には少額年金者が多くなると言う統計もあり、その方々が生活保護を受給することになれば多額の税金が投入されることになります。敢えて批判を覚悟して言えば、これまで指摘されてきたような医療券による不正薬剤入手・転売、ギャンブル・嗜好品への散財、不正受給などの課題への対策を公表・実行することが、公平性の観点で国民間の合意形成を前進させるとも考えています。