生活圏の有害鳥獣駆除
2023年11月22日
北海道で牛60頭以上を襲ったヒグマ(OSO18)、北海道の住宅地に出没を繰り返すヒグマ、東北地方で収穫直前の農作物を食い荒らしたツキノワグマなどの有害鳥獣駆除に対する苦情の殆どは道県外からで、中には名を名乗らず数十分も話を続けたり、泣きわめく人もいるそうで、行政側も多数の苦情が寄せられて業務に支障をきたし、悪質な電話を切ることも許可したそうです。また、被害地の首長が「人命最優先(市街地戦)」を挙げるほど特に今年は各地で熊の目撃情報や農作物等への被害、死傷者がでるなど、有害鳥獣被害の深刻化が懸念されます。
国立環境研究所と宇都宮大学が発行した「有害鳥獣の捕獲後の適正処理に関するガイドブック」によれば、ニホンジカやイノシシ等の有害鳥獣による農作物被害は年間200億円以上に上っており、その原因として営農意欲の減退や耕作放棄の増加、森林の生態系への被害、下層植生消失による土壌流出、車両との衝突事故等が挙げられています。これまでは、人間の生活領域拡大により当該鳥獣の生活圏との間に緩衝地帯(森林等)が減少したことや、里山の耕地放棄、天候不順による冬眠に備えた食料不足(どんぐりなど)が原因とされていました。また、WWF(世界自然保護基金)でも、有害鳥獣が人の手が入った土地に残された果実等の魅力に気付いたことが、人間との接触機会を増やしたとあります。
一方で、有害鳥獣の生息数は駆除者の減少等により増加していることから、農林水産省と環境省が中心になって、鳥獣捕獲強化対策により生息数を適正数(半減が目標)にする取組推進がされていますが、捕獲個体をそのまま廃棄物として処理する場合は自治体が処理責任を担うなど、捕獲活動に支障をきたす状況も見られるそうです。また、ジビエ(食肉)利用拡大に向けた取り組み支援でも消費や流通に課題があるようです。もし、苦情を入れられた方ご自身や身内が被害当事者となった場合、人命と安全保護(死のリスク)より鳥獣保護を本当に優先するのか疑問が残ります。