オフィス鴻

社会福祉と生活弱者

2024年06月23日

日本の国民皆保険制度は、保険診療費の3割の自己負担額で良質な医療を受けられる世界でも恵まれた制度です。医師や検査機器類のレベルも非常に高く、最先端治療を受けられるため、3ヶ月以上日本に滞在する外国人や日本人の扶養家族になれば、日本の医療制度下で治療や一時金をを受けることができる仕組みがあるそうです。厚生労働省の資料によれば、約100万人の外国人がこの皆保険制度の恩恵を受けており、中には不正受給や指南役をビジネスとする例が指摘されています。また、障害者福祉の充実(インフラ・施設・就業機会など)、介護保険制度による高齢者支援なども諸外国に比べて優遇されており、結果的に現役世代の負担増を招いている一因とも言えるでしょう。

一方で、シングル世帯の貧困問題が取り上げられていますが、同じく厚生労働省の資料ではひとり親世帯は150万世帯(子供の8人に1人)と世界水準と比べても平均的数字ですが、低所得のため自助努力でダブル・トリプルワークをして家計を支える親が多いのも特徴の1つだそうです。ここではひとり親世帯になった理由(離婚・死別など)を問題視している訳ではなく、高齢者の中にも国民基礎年金だけでは生活できずに生活保護を併用する方も増加傾向にあること、今後一人暮らしの高齢者が増えることは統計上でも明らかになっており、高まる一方の相対的貧困率の中身をもっと精査した上での政策議論が必要だろうということです。親世代からの貧困の連鎖が様々な社会的課題を引き起こす要因だとも言われますが、文化的な生活水準で生きていく権利は日本国憲法で保障されているのに、その原資(年金・医療など)は高齢者に先に分配されて枯渇する可能性があることや、先送り方式により今後の原資が確保できず若い世代への負担増でその場をしのぐだけでは、世代間や格差の不公平を解消できないように思います。

最近、日本でもベーシックインカムの議論が始まりつつありますが、不正行為(年金も、延納や減免申請ができます)が起きにくい仕組みと、公平性を担保した施策が求められているのだと感じています。