オフィス鴻

老後4千万円問題

2024年11月12日

数年前、行政・立法(国会)から老後2千万円問題が提起され、大きな議論を巻き起こしました。編集人は行政作成の資料からは政治的意図は余り感じませんでしたが、一種のシビリアン・コントロールであることには変わりなく、また統計値・推定値の扱い方の根拠が曖昧な面が国民の不安を煽った形になっていたのだと思っています。最近は新たに老後に備えて4千万円の準備が必要だとの論調もありますが、国民1人1人がそれぞれできることをしていくのが本筋で、老後の生活が困窮しないように若いうちから計画的な資産形成(新NISA等)を促す施策が取り入れられるようになってきました。現在の日本の公的医療制度は戦後に作られたものを改定しながら現在に至っており、超高齢化社会の基となる医療の進歩により高額な治療を安価で受けられるようになったことが一因として挙げられます。

しかし、今では後期高齢者に係る医療費増加が国家財政を圧迫しているのはご承知の通りで、自己負担額の引き上げは避けて通れない課題のように思います。「今日は〇〇さんが病院に来ていないから、具合でも悪いのか」といった笑えないジョークのような話もあったほど、高齢者が数多の病院を社交場のように利用していた時代もありました。また、世代間格差という視点では現在の高齢者も現役時代には収入に応じた社会保険料を負担していたのですから、単純比較はできませんが現在の高齢者(65歳以上)の年間医療費は1人当たりで計算すると約80万円近くに上るという厚生労働省の資料があります。また、老齢国民年金のみで満額受給できない高齢者(特に1人暮らしの女性に多いと言われています)が生活保護費として一部を併給されているケースも多く、自己責任論だけでは解決できない問題のように思います。

今後、医療制度改革が進められるにしても数十年に及ぶ長期間の移行措置は必要だと思われます。また、最も合理的なのは過度な医療に頼らない生活習慣と相応の医療費負担とすることだと考えています。