自転車の反則金制度
2023年08月29日
先般、警察庁が自転車の交通違反に対して「反則金制度(青切符)」の導入検討に関する有識者会議を始めたとの記事がありました。1967年の道路交通法改正で創設された交通反則通告制度(反則金を納付することで、刑事罰は受けない)では、自転車に対して危険性・悪質性が高い違反は刑事責任が問われる「赤切符」の対象として取り締まりを実施していますが、2022年には2万5千件近くに上り検察官への送致などの業務上の負担が大きくなっている現状もあるようです。
一般社団法人自転車産業振興会のHPによれば、2021年度調査では全国で5,700万台の自転車があり、⾃転⾞保有台数が多い都道府県は「東京都」「⼤阪府」「埼⽟県」、自転車が当事者となる事故の70%以上は自転車側の違反に起因しており、安全運転義務違反など交通ルールの浸透不足が主な原因となっていると分析しているそうです。参考までに、⾃転⾞損害賠償保険等への加入は49%と過半数に達しておらず、2015年に兵庫県で自転車保険への加入を義務付ける条例が制定されて以降、令和2年からは東京都全域も対象となるなど、全国的に義務化(一部は努力義務)の流れが広がってきています。
自動車事故では億単位(自転車では過去最高約1億円)の賠償責任が生じたケースもあり、任意保険未加入の場合には自賠責保険(平均2.5千万円)だけでは加害者側が損害賠償額を支払えない事態も生じます。また、小中学生や高校生が加害者となってたケースでは、未成年であっても賠償責任を免れることはできず、親に賠償命令が下ることもあります。現在、被害者救済の観点から国の補償制度(犯罪被害者給付金、平均は約7百万円)の大幅改定が議論されていますが、加害者側の補償意識が不十分ならば被害者家族の生活にも大きな支障が出ることになり、利用者のマナーに頼るだけの現状に対して早期改善が望まれるところです。