オフィス鴻

航空管制業務の限界

2024年06月28日

年初に発生した羽田空港での航空機衝突事故後も、日本各地でインシデントが続いています。常に緊張を強いられる航空管制業務に就いていた職員の早期退職(精神面を病んで30歳前後で退職する方が多いそうです)が続いていることは以前から知られていましたが、職員不足により数年前から業務効率化を目的として各空港に駐在していた職員が複数の空港での統括管制業務を担当するエリア制(8拠点程度に集約)や一部空港運営業務の外部委託が進められています。さらに、国策によるインバウンド需要の高まりによる離発着便の増加に対応するため、航空保安大学校では年間100名以上を育成・配置しているにも関わらず、退職者が上回り実質的な職員増員とはならずに羽田空港を筆頭に管制官1人当たりの業務量が増えてるのが実情のようです。

編集人もある事案で国土交通省航空局の職員(管理職)と直接話をしたことがありますが、無責任とまでは言わないまでも一般的な民間企業(大企業)に比べて行動・対応が非常に遅かったことを覚えています。もちろん、職員によっても対応のスピード・良し悪しは異なりますが、航空管制業務等に関わる約800名が所属しているとされる航空局全体に職員の離職を減少させる自浄作用を浸透させることは、職場環境の改善、勤務体系(日勤・夜勤・明番)の見直しなども必要でしょう。これは、管制業務に限ったことではなく、多くの企業で組織運営の根本的課題であることは容易に想像できます。

最近では、京都での交通渋滞、アニメ等の聖地巡礼によるマナーの悪さなど、オーバーツーリズムへの国としての対応(地域行政だけでは対応しきれない)を求める声も高まり始めました。世界の物価高が進行する中で、円安・長期デフレ等により相対的に日本の物価の安さが注目されていますが、生活実感として良くなったと思えるのは一部の国民に限られているのかも知れません。実質的な税金・社会保険料負担の増加が賃上げ額を上回っている中でも、なんとなく居心地が悪くない日本での生活に慣れてしまった結果、様々な隠れていた弊害が露見してきたのかも知れませんね。