オフィス鴻

航空2030年問題

2024年07月24日

航空会社にとって2030年はバブル期に採用されたパイロットが定年退職期を迎えるため、アジア圏を中心にパイロット不足が懸念されています。編集人が学生時代は、航空大学校(1年の合格者120人)卒業生のうち航空会社へ就職できるのは約20人ほどであったっことを考えると隔世の感があります。現在は、パイロット養成学科が私立系大学に設置されたり、定年を延長したり、航空大学校の定員増加を図ったり、そして自社養成する航空会社があるなど選択肢は非常に増えましたが、何といってもライセンス取得までの養成費用(約2千万円)を自費で負担できる家庭は限られており、それ以外にも第一種航空身体検査合格が最難関であることには変わりは無いようです。

しかし、もう1つ大きな問題があることを認識しておく必要があります。それば、旅客機を安全に運行するための保安要員不足問題です。今年1月、羽田空港で海上保安庁機と日本航空機が滑走路上で衝突・炎上するという痛ましい事故が起きました。原因は様々な要素が絡み合っているようですが、国土交通大臣が主要空港での管制官不足を解消する考えを示しました。国家公務員職の中でも特に航空管制官はその勤務体系、処遇、業務責任の重さ等から早期退職(30歳代)が多いことで知られており、これまで行政改革の名のもとに統廃合を進め人員を抑制した経緯があります。具体的には大阪市泉佐野市にある航空保安大学校の定員増を念頭に置いたものですが、なぜ離職者が多いのかについては触れられていません。これだけAI技術が発達したのですから、もっと安全対策と処遇改善にも力を入れるべきだと編集人は思っています。

もう1つは、保安職員(空港のグランドスタッフ)の処遇改善です。多くは各航空会社が自社または委託方式で対応していますが、日本航空とANAは国内の地方空港を中心に相互で人員を融通し合うことを進めています。実際に、保安要員の年収は4百万円に満たないとも言われ、本業(農業等)と兼業していることも多いと聞きます。つまり、パイロット不足の問題だけでは解決しないと言うことでしょう。