郵便局長の世襲制
2025年07月31日
かつては地方の名士であった郵便局長による不祥事が新聞記者によって暴かれたことがあります。地方にはかつて特定郵便局(現在はその名称は使われていない)が多数存在し、選挙における集票組織として機能していた時期がありました。また日本年金機構(当時は社会保険庁)の失われた年金問題でも明らかになったように、戦後は現金徴収した年金保険料を着服するような不届き者も多かったとされています。今回の不祥事は元郵便局長による顧客資産(現金)の詐欺事件が20年以上放置され、被害額は判明した分だけで16億円を優に超えるとの報道でした。
日本郵便で発生した不祥事はこれまでも沢山報道されてきましたが、この手の詐欺は何度も報道されています。被害者にどの程度の落ち度があったにせよ郵便局長の世襲という利権絡みの構造の中で起きた事件であり、この郵便局でも未だ3代にわたって世襲が続いていると言います。多くの詐欺事件では遊興費・ギャンブル・投資の穴埋めなどに加害者が騙し取った金員を使うことが知られており、このケースでも複数の不動産・自家用車購入や遊興費に使ったことが裁判で明らかにされています。さらに驚くことに子供に郵便局長のポストを世襲した後も局舎内で犯行を繰り返していたとあり、その点では子供も共犯(幇助)であった可能性も否定できません。
日本郵便と言う大組織では末端まで管理することは事実上不可能と思われる面はありますが、株式を上場している以上ガバナンスの徹底は当然の責務です。しかし不祥事を隠そうとすればするほど、現状運営との矛盾が生じてくるのは自明の理です。最近でも配達員の点呼を全くとっていなかった例も報道されており、現業でまじめに仕事している従業員が続々と連鎖退職している現状を経営陣はどのように考えているのでしょうか。諺に「流れる水は腐らない」「淀む水に芥(あくた)たまる」がありますが、まさに腐敗が起きない組織に生まれ変わっていただきたいと思う編集人です。