オフィス鴻

ファンダムと推し活

2024年08月25日

アニメの聖地巡り、1980年代のポップス、マンガ、フィギアグッズが訪日観光客にも大人気だといいます。日本発祥の文化に海外の方が興味をもってくれることは、日本人が海外に行くときに、現地の風習や宗教観などを理解することと似ているでしょう。また、さまざまなエンターティーンメントに対するファンの熱狂度は、産業としてエンタメ界の重要なコンテンツマーケットに比例して拡大していますが、一方で八方良しとは言い難い面があるのも事実なようです。さらに、ファンや推し活がさらに進むと「ファンダム」という一種の集団的自己表現の場となり、予定調和的な範囲を超えて弊害を生む出す可能性も指摘されています。

このマーケットをけん引する原動力となっているのは、もともと「オタク文化」と呼ばれていた一種の同好会的な集まりがSNSの普及で爆発的に拡大したことだと言われています。ただし、そこには決められたルールは存在しておらず炎上やトラブルの原因となる諸刃の剣であることも理解しておくべきだと感じます。日本でも、撮り鉄(列車を撮影するマニア)のマナーの悪さ(多くは善良な人でしょう)は度々報道されていますが、自己表現ではなく自己満足を満たす行動のように思います。直接的な内容とは異なりますが、マスメディアでも作品に対する誹謗中傷により尊い人命が失われることがあり、もはやマナーという日本人が大切にしてきた性善説が通用しない世の中になっているのかも知れませんね。

最近は、倍速・三倍速視聴などで短時間で大量かつ様々な情報をSNSで容易に手に入れることができるため、編集人のように紙媒体の情報の中から試行錯誤しながら自分なりの意見を客観的に導き出す方も、新発行部数の減少などを見れば少数派になってきているのでしょう。本来は人生を豊かに文化を深化させることができるファンダムですが、世の中で起こっている事件の中には明らかに自分自身の理屈で正当化する、全く面識のない人を攻撃するなど、善悪の基準を判断できないほどの危うさを持ち合わせていそうです。