地方創生と観光経済
2024年10月12日
JNTO(日本政府観光局)の資料によれば、2024年度の訪日観光客が7月までに2,000万人を超えており、2023年度の2,500万人を大幅に上回る見込みだと言います。その一方で、これまで観光業の恩恵を受けていたヨーロッパ各地では物価の高騰により地元住民の生活に大きな影響を受けているとして、スペインのバルセロナでは地元住民による大規模デモが勃発、ギリシャではノー・モア・ツーリズム運動が盛んに行われているそうです。コロナ禍で停滞していた経済活動が再開するに従い、アフターコロナにより一気に観光客が増加したことで「観光税」や「二重価格」を取り入れる国や地域も増えましたが、その恩恵をあずかっていない地元住民を中心にオーバー・ツーリズムへの批判が高まっています。
日本でも、都市部や京都等の有名観光地では宿泊料金の高騰、公共交通機関(主に路線バス)の大混雑が地元住民の生活に影響を与えているほか、日本アニメに見る聖地巡礼などでマナー違反が続出していると伝えられました。また、富士山を見られるコンビニには撮影できないようにネットが貼られ、軽装での弾丸登山に依る救援依頼(高山病等)が急増するなど他国と同じく弊害が指摘されています。日本人の海外旅行と言えば概ね1週間程度の日程で組まれますが、長期間のバカンスがある海外からの訪日客は2~3週間程度の日程で東南アジア諸国を廻る方が多く、結果的に大混雑を助長している側面がありそうです。
しかし、訪日観光客の中には日本人が知らない地方の観光スポットを紹介するグリーンブック(日本の「海外の歩き方」のような情報誌)に知らない間に掲載され、日本の地方の良さを再認識できる体験ツアーなどが人気となって、地方創生モデルの1つのきっかけとなっているようです。一方で京都の錦市場や大阪日本橋にある黒門市場などは、一獲千金を狙った外国人が品質の良くない商品(食べ歩き等)を法外な値段で観光客に提供しており問題化するなど、まだまだ課題は多いようですね。