オフィス鴻

沈黙の外交

2025年08月25日

日本の外交政策は世界から見るとその貢献度に対する評価がまちまちですが、一貫しているのは「何事にも謙虚であり、なかなか自分の意見を前に出さない」ことが他国の国民性と異なっているということです。しかし最近ではサイレント・キラーとも言うべき外交事象が見受けられるようになりました。例えば国連・IMF(国際通貨基金)への拠出金に対して見合った価値が見いだせていないことを公に伝える、IWC(国際捕鯨連盟)からの脱退などが挙げられます。戦後一貫として他国より前に出ていなかった日本ですが、その意志を静かに対外的に発信し始めたことが新たな評価へと繋がっているようです。

また民間レベルではアメリカのトランプ大統領が発動した報復関税によって、日本企業がサプライチェーン上で如何に重要な役割を果たしていたことが欧米諸国でも認識されているようです。たった1つの日本製部品がなければ諸外国の製造業に大きな影響を与える「見えない制裁」と言われる日本製品の代替性のなさが、改めてその重要性を示しているともされています。今後どのような変化が生じるのかは判りませんが、少なくとも関税問題が新たな日本の価値を再発見させるきっかけになっているものと考えられます。言い換えれば世界中に日本の静かさに秘められた強さが伝わっているとも言えそうです。

その他にも今年5月にはアメリカのトランプ大統領が日本企業によるUSスチール合併を急遽認めたり、イスラエルのガザ侵攻に起因してハーバード大学への留学生受け入れ制限を設けたりと施策が猫の目のように変わっています。しかし日本が必要最小限の交渉を静かに行っていることを鑑みれば、沈黙の効果が一定程度効いている様に思われます。またこれからの日本に関する未来像を想像したときに、日本人固有の「場や相手を察する文化」が世界中の国・企業にも認め始められています。そこには日本人には当たり前の思考・行動規範が大きく関与していたとも言われ、その世代を超えた文化継承の強さが再評価されていますね。