オフィス鴻

経営者の朝令暮改

2023年04月07日

上場企業は、株主総会、投資家・マスコミ向けの業績説明会などで、経営者が中期経営計画などを投資家や株主に説明します。そして、株式時価総額を高めたり、1株当たりの価値(PBR;株価純資産価値、解散価値)上昇に力を注いでいきます。また、経営者はごく一部の取締役(取締役でない執行役員は従業員です)と経営上の重要事項を極秘裏に複数併行して進めることがあり、抽象的な表現を用いて将来性をアピールすることもあります。

また、会議資料や社内報、開示資料(IR・ビジネスレポート・決算開示)などを深く読みこむと、経営者のメッセージが抽象的に浮かび上がってきます。本来、幹部職は経営者の考える方向性を正しく理解した上で委譲された権限内で仕事を進めますが、中には上席管理職が隠密で進める仕事もあるでしょう。一方で、従業員の中には「また何か新しいことが始まるのかな」、「以前とは違う方向で進められそうだな」という思いや、「どうせ途中でまた方針が変わるのだろう」と、経営者への不信感をあからさまに周囲に吹聴する管理職や事務職もいます。

編集人もM&Aの前日に理由説明すらなく中止決定を伝えられ、新聞への公告を取り消すなどの不条理な経験もしましたが、「経営者の言葉(ニュアンス)の変化(本質)を、従業員にわかりやすく語り伝える能力」は、経営幹部・上級管理職に求められる重要な資質の1つだと考えます。経営者の「直感」「ひらめき」など言葉だけでは表現が難しいことを企業経営に織り込み、新たな企業文化の醸成や改革・発展を促し、企業の成長を支え続ける原動力になりますので、従業員には「朝令暮改(すぐに変更されて一定せず,あてにならぬこと)」に見えても、優れた経営幹部に恵まれた企業ならば、その思いは必ず正しく伝わると思います。