裏切られた自由
2025年12月12日
ハーバート・クラーク・フーヴァ―氏は、アメリカ合衆国の第31代大統領として知られています。1929年に「どの鍋にも鶏1羽を、どのガレージにも車2台を!」というスローガンを掲げて大統領選に圧勝した同氏ですが、世界恐慌で荒れる社会情勢の中では十分に能力を発揮しきれなかったとも言われています。退任後に敗戦後の日本に派遣された際には、当時の日本の食糧事情に関して、食糧の輸入がなければ日本国民に必要な食糧は壊滅的であると当時のマッカーサー総司令官や連合国軍総司令部に助言したとされており、当時の日本を知る貴重な人材だったようです。
編集人が同氏のことを知ったきっかけは、「裏切られた自由(原題FREEDOM BETRAYED:Herbert Hoover’s Secret History of the Second World War and Its Aftermath)」という第二次世界大戦の過程を検証した回顧録です。一例として真珠湾攻撃にいたる日米関係について関係者の証言をまじえた分析・日米戦争がルーズベルトの外交によって引き起こされたと指摘しているなど決して日本びいきではなかったものの、客観的な視点から現代の私たちにも従来の歴史認識を変えるだけの影響力がある書籍だと思われます。つまり第二次世界大戦とは正義と悪という対立構図だけではなかったと考えているのです。
昨今のアメリカ政治はこれまでの中間層がバランスを取りながら政党を支持していく形から、民主党と共和党の両支持者による分断が顕著だと言われます。つまりアメリカが本当の意味での民主国家として果たしてきた役割が変化し、ロシアのウクライナ侵攻・中東情勢・中国との対立激化・関税問題などを見ても第三次世界大戦の引き金になりかねない事態を巻き起こすリスクが高まっていると感じています。同著は2011年に発刊され既に15年が経過していますが、編集人はかなりの長編であるものの少しずつ読み進めて行きたいと考えています。



