オフィス鴻

論語(泰伯)

2025年12月14日

論語には、孔子が弟子とのやり取り(問答)を弟子たちが記した泰伯(たいはく)があります。泰伯は周国王の長男で呉国を建てた人物とされ、元々は長男として周王になる立場の人物でしたが。しかし当時の周王が三男(李歴)を跡取りにしたいことを知り、次男とともに国外に出たとされています。現代社会に於いては、世の中に名が知られたり立身出世を望む方が少なくありません。もし泰伯が本来自分が継承するべき王位を捨てて三男が王位に就いたことが世の中に知られれば、民衆は泰伯が王位を継承しなかったことについて周王や三男に対して批判的な感情を持つことは容易に想像できます。

実際に、後年では泰伯は天下を人に譲った最高の徳を備えた人物であると評価されています。そして君子は礼について尊び、傲慢や粗暴をなくして顔つきを整える心を整理することを実践したとされています。現代社会ではどちらかと言えば上司に諂うタイプの方が出世することも多いのですが、泰伯のように徳を身に付けながらも敢えて知らぬふりをして真理を追究する姿勢は非常に参考になります。つまり人間として生まれせっかく美徳を備えていたとしても、礼節・仁がなければ踏み出した一歩目が裏目に出てしまうと言うことでしょう。人間は微妙なバランスの上に生かされていると感じます。

もう1つ編集人にとって大きな示唆を与えてくれた言葉があります。孔子が説いた一説に「信を篤くし学を好み、死を守り道を善くす。危邦には入らず、乱邦には居らず。天下道あれば則ち見われ、道なければ則ち隠る。邦道あって、貧しくかつ賤しきは恥なり。邦道なくして、富みかつ貴きは恥なり。」です。この言葉には学問を正しく納めることが判断力を養い、善悪を見分けられるとしています。換言すれば出処進退の美学を表現している気がします。編集人は日本人として心に決めていることに、もし日本が危機に陥るならば自分の一命を投げうってでも努めたい意志と少し似ていますね。