オフィス鴻

アフターコロナの物流業界

2024年06月02日

ようやくコロナ禍による世界中のサプライチェーン網の寸断や料金変動などの影響が薄らいできたように感じます。輸出をメインとする大手製造業は円安を背景に好収益を享受し、また一部の国際海運業界は運賃高騰による大幅な利益拡大となりましたが少しずつ鎮静化してきているようです。しかし、コロナ禍が国際サプライチェーンの脆弱性と国際紛争に起因する国益面重視を露わにしたことで、国際関係力学の変化が新たな課題になっています。そのような中で、世界の物流業界では規模拡大や専門分野に特化するM&Aが加速している印象がありますが、あくまでも大手企業の話であり、中小物流企業は人手不足・エネルギー価格高騰・労務管理強化に対応するだけの資金・人材に乏しいのが現状かと思われます。

日本国内大手物流事業者の中では国内物流の減少を見込んで国際物流強化を図る事業者が多く、その他にも物流とはあまり関係のない分野(販売、各種サポート)への進出や新たな規制緩和策(物流施設など)を活用する事業者も見受けられます。しかし、現在の物流業界の置かれている状況を有価証券報告書等から近視眼的かつ客観的に見渡してみると、いわゆる本業である輸送・倉庫・流通加工の3本柱での適正収益性確保より、その他事業領域(倉庫サブリース、中間流通コンサルティング、ECなど)への偏重傾向があるように思います。その中でも体力的・立場的に価格を含めた交渉力に弱い中小事業者がとるべき選択肢はかなり限定的であり、新たな付加価値をつけることは容易ではないため、自然とM&Aを含めた自然淘汰が進むだろうと考えています。

また、株式市場での物流事業者に対する評価(経営状況、成長性など)はPBR(株価純資産倍率;Price Book-value Ratio)の1倍割れ物流事業者が多く存在していることから課題が多いという投資家の判断でしょう。その他、有価証券報告書を詳細に読み解けば、将来への事業投資(殆どが本業の周辺領域)に対する企業戦略が見え隠れすると考えています。