オフィス鴻

サントリー配送網改革

2024年09月23日

サントリーHD社が「このままドライバー不足が進むと自社商品が届かなくなる可能性がある」として、異業種である大王製紙や他の製造業とのトラック共同配送に乗り出しました。特に酒類・飲料・加工食品は国内物流の多くを占めており、また日常生活に欠かせない商品ため、輸送手段の確保(安定供給)・Co2削減などの環境問題を含めたトータルを俯瞰した取り組みです。しかし、その内容を運送事業者の立場から改めて精査してみると「連結トラック」「協働輸送(往復)」「中継輸送」「モーダルシフト」などと、荷主側がトラック運行・滞留時間削減に対する取り組みが主目的で、一部では料金値下げも行われているようで公正取引委員会から是正勧告(悪質な場合は社名公表)を受けないための対策が多く、ドライバー不足の根源的問題解決に向けてのアプローチにはなかなか見えません。

皆さんが普段口にしている大手飲料メーカー等の商品(缶入り、アルコールは除く)の製造原価は概ね10~15円と言われていることは業界では有名です。また、仲卸事業者(問屋)へのバックリベート(販売数量に対するインセンティブ等)は形は変われど残っており、やはり市場占有率が最優先であることに違いはありません。そのため、トラックドライバー不足問題を下請事業者と言う視点で見ている限りは、処遇改善(労働環境整備・賃金)に繋がる施策は後回しかつ経費(外注費)との認識が強いようです。自由競争社会ですから、各社各様の取り組みは評価しますが、30年以上前から運送業者が荷主に要望される以前から取り組んでいる内容が殆どです。

公正取引委員会・中小企業庁が物流慣行にメスを入れ(下請けGメン等)、取り締まり強化を図っていることは一定の評価に値します。もし可能であれば荷主企業側・Gメンもトラックドライバーの仕事に1日でも同乗経験すれば、この問題の本質の一部に触れることができると考えています。まずは、現場の作業環境を正しく理解して頂くことが先決だと思います。