オフィス鴻

ジェットスターの未払問題

2025年12月03日

格安航空会社ジェットスター・ジャパン(LCC)が、客室乗務員等に対して一方的に賃金を引き下げたのは無効だとして従業員が未払い賃金の支払いなどを求めた裁判で、東京地裁は会社側に約1,200万円の支払いを命じました。このほかにも客室乗務員が出勤停止処分の無効確認を求めるなどの裁判では、ともに第1審では労働者側の請求がほぼ認められました。海外旅行への航空料金がLCC航空の誕生で消費者に多大な利益をもたらしている一方で当然ながら経営は相応のコストカットを強いられる現実があり、今回の裁判では労働法と言う観点で焦点が当てられました。

判決によれば原告15名は2020年から客室サービスマネジャーに支払っていた月額手当(75,000円)を勤務実績に応じて減額し始めたことが、2021年に改定された新就業規則・賃金規程の導入に同意しなかったことで一方的な賃金減額に至ったことは無効だとして、差額の支払いを求めて東京地裁に提訴したとされています。長年人事労務を担当してきた編集人ですが、職務・業務内容に応じた処遇の公平性と就業規則改定に至った合理性には若干会社側の主張に無理があったものと感じています。人件費削減が目的でなかったと主張しても、労組に説明責任を果たしていなかったのでしょう。

ここで重要なのは、新しい賃金体系が適用されて以降実際に賃金が減っていることは「相応の不利益を受けている」と指摘されたことです。CA業務の中には乗客の安全を守る航空保安要員としての役割が含まれており、「高度の必要性や内容の相当性も認められない」として裁判所がその合理性を否定したことは至極まっとうだと思われます。判決後に労働組合代表は、公共の安全を守る職業として労働者が安心して働ける職場環境を会社が構築し、その経営責任を重く受け止めるべきとのコメントを出しました。今回は現場サイドからの声が反映された形ですが、労働基準法に対する理解が試された判決でしたね。